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相続税の申告で行った土地の評価を見直す

第一回「相続税還付とは①」

初めまして、フジ総合グループと申します。 
フジ総合グループは、相続専門税理士と不動産鑑定士が協働する全国でも珍しい士業事務所です。
両者が協働することで「相続税土地評価」に強みを有しており、この強みが最も分かり易く表れる業務として「相続税還付」があります。

ただ「相続税還付」は「所得税還付」と違い、一般に馴染みがなく、良く分からない方が殆どだと思われます。

先日の日本経済新聞朝刊(2022年9月24日)の記事によると「相続税の更正の請求による還付金額は、毎年400億円と多額になり、その多くが土地評価の見直しによるもの・・」とされています。

恐らく多くの人が、この記事を見て「このようなことがあるのだな・・」と、他人事で終わってしまっているかもしれません。

しかし、このコラムの結論にもなりますが、相続税の還付可能性はかなり高い確率で発生しており、決して他人事ではなく「やらないと損する」ケースが非常に多いのです。

なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?

相続税は国税通則法第23条で定める「更正の請求」を行うことで、一度納めた相続税でも、5年以内であれば戻ってくる可能性があり、それを一般に相続税還付といいます。

相続税還付で評価を見直す財産は圧倒的に土地が多いのですが、土地は一般に高価なので、戻ってくる額も高額になるケースが多いのです。

実際にあった話ですが、代々農家の方で、ご自身が使っている軽トラックが古くなったから「もし相続税が戻ってきたら軽トラックの買い替え資金に充てようかな・・」くらいの軽い気持ちで依頼された方がいらっしゃいました。

ところが土地を適正に評価してみると大幅に相続税額が下がり、数千万円の相続税が戻ってきたのです(戻ってきた税を所得として申告する必要はありません)。

元々戻ってくるとは思っていなかったお金ですからご家族も大喜びで、軽トラックどころか、娘さんのためのマンションを購入されたそうです。

当グループの実績では、還付金は納めた相続税額の2割程度になることが多いです。
金額も数百万円から数千万円、ときには億単位で還付されることもあります。

先ほど相続税還付の期限は「5年以内」という話をさせていただきましたが、「うちは、親の命日から5年ぎりぎりだぞ」という方は気を揉まれるかもしれません。還付の期限をもう少し正確に表現すると、相続税の申告期限から5年以内です。相続税は、相続が発生してから10カ月以内に申告しなければなりませんので、実際には亡くなられた日の翌日から5年10カ月以内なら、相続税の還付を受けられる可能性があります。

「でも、それは例外的なケースでしょう。うちはきちんと税理士の先生に依頼して申告したから、税金を払いすぎているわけないよ」

皆さんそうおっしゃいます。ところが、相続税還付で当グループにご相談に見えた方のおよそ7割の方に相続税の還付可能性が出ているのです。

当グループの相続税還付業務は平成5年にスタートし、これまで約30年間に渡って行ってきました。
その間に見直しを行った相続税還付案件は5,000件を超え、直近では年間500件以上にものぼります。

では、なぜ相続税の土地評価額が高くなるのか?

相続税の申告は、すべて税理士にお任せという方が多いと思います。
もちろん税理士は「税金のエキスパート」ですから、相続税の財産評価基本通達に基づいて、相続税評価を行います。

しかし、ここに盲点があります。
税理士は「税金のエキスパート」ですが「不動産評価のエキスパート」ではありません。
このため、申告された土地の評価を不動産鑑定士の時価の観点から見ると、さまざまな「減額すべきポイント」が見つかります。

例えば、「縄延び」や「縄縮み」(公簿に記されている面積と実際の面積が違うこと)に気付かず評価が行われていることがあります。
この場合、土地家屋調査士に依頼して現況測量をすることで、大きく土地評価が下がることがあります。

また、「高低差」「接道条件」「造成費」といった、物理的に確認できる減額要因の見落としや、「地役権」「公法上の制限」といった、権利関係における減額要因もあります。

更には、土地の評価範囲や、利用形態といったところでの減額要因もあります。

その他、数を挙げればキリがないのですが、ここで申し上げたいのは、税理士が評価を間違っているということではありません。

税理士はその業務の範囲でしっかり評価を行っているのですが、土地という財産が一つとして同じものがなく、減額要因もいくつもあることで、全てを把握するのは非常に困難であり、不動産評価だけでも高度な専門性があるということをお伝えしたかったのです。

相続税路線価は、その路線の標準的な使用を想定した単価になります。
言い換えれば、その路線における最も高い土地単価になります。

土地の売買を想定していただきたいのですが、不動産業者が査定を行う際はあらゆる増減価要因を織り込んで値付けを行いますが、それに近い作業を、不動産評価のエキスパートである不動産鑑定士が行うことで、相続税土地評価を下げられる可能性あるのです。

税務署は、それが正しい評価であれば、申告内容の変更を認め、納めすぎていた税金を納税者に返してくれます。

ですから、相続財産の額が大きく、土地の占める割合が大きいケースにおいては、還付の可能性が高く金額もより高くなります。
もちろん土地評価のルールに従って、法的に正しい土地評価をするわけですから、税務署も積極的に検討してくれます。間違っても、税務署ににらまれるようなことはありません。

当グループが扱った相続税還付手続きの案件の中で、還付額が比較的大きかったケースを紹介しましょう。
小林正吉さん(65歳・仮名)は、ある地方都市の大地主です。3年ほど前にお父さまを亡くされ、たくさんの土地を相続しました。

顧問税理士に相続税申告書の作成を依頼すると、相続税額は1億7,500万円にものぼったそうです。いかに資産家でも、そんな大金を現金ですぐに用意できるわけはありません。小林さんは金融機関から借入を起こし、なんとか相続税を納めました。

その後、たまたま小林さんのお知り合いの保険代理店を営むAさんが、当グループのセミナーを受講し、小林さんにこう言って勧められたそうです。「納めた相続税額が大きく、またその資産の大部分が土地である場合は、多額の相続税が還付される可能性があるそうです。一度、見てもらったらいかがでしょう」

小林さんは「そんなうまい話があるわけない」と乗り気ではありませんでしたが、熱心に勧められるので、「話だけでも聞いてみようか」ということになったのです。

まったく本気にしていない小林さんだったが・・・

申告書を拝見すると、明らかに評価額が高い評価がいくつも見受けられました。
もしかしたら1億円規模の還付になるかもしれない・・・と考えられましたが、この段階では「少なくとも3,000万、4,000万円くらいは戻る可能性があります」と申し上げておきました。

私たちの説明を聞き終わった小林さんは、それでも一向に信じてくれる様子がありません。最後には、こう言って大笑いされました。

「もしも税金がまったく戻らなかったら、そちらにお金を払わなくていい、つまり完全成功報酬ということだね。それなら、うん、やってみたらいいよ」

「ただし、うちはハナから国税局出身の権威ある税理士の先生に申告をお願いしたんだから。土地評価にしてもガチガチにやってもらってるからね。悪いけど、『くたびれ儲け』になるよ。むしろお宅らがやった方が税額が上がっちゃうんじゃないの? わっはっは」

私たちは減額できる要因を細かくチェックし、小林さんが相続した財産の総額を再計算しました。最初の申告書では相続税額が約1億7500万円でしたが、私たちの計算では約4,700万円となり、なんと1億3000万円近くも相続税額が下がったのです。

私たちは還付手続きのための書類を作成し、管轄税務署に提出しました。何度か税務署担当者とのやりとりがありましたが、最終的には私たちの評価が認められ、間もなく小林さんの指定した銀行の口座には約1億3000万円が、管轄税務署から相続税の還付金として振り込まれました。

驚いたのは小林さんです。国税局OBの、当該税務署にはいちばん顔が利く偉い税理士だったはずなのに・・・というわけです。

ここまで高額になるケースは珍しいとしても、このような例はよくあることなのです。
なぜそんなことが起こるのか、次回じっくり解説していきたいと思います。

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